【2023年度】小規模事業者持続化補助金~スケジュール他まとめ~ (山口県)

「小規模事業者持続化補助金」は小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成したうえで行う販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。

経済産業省の補助金で、下記の3つの特徴があります。

  1. 小規模事業者向け
  2. 販路開拓、生産性向上など幅広い経費が対象
  3. 商工会議所・商工会の支援を受ける
目次

応募数と採択率

 補助金の規模感と難易度を確認してみましょう。
 下記の表は過去の公募回ごとの採択率・応募件数・採択件数をまとめたものです。公募回によって多少の前後はありますが、平均的には10、000件前後の応募に対し、6、000件強が採択され、採択率60%強という補助金です。

受付回採択率応募件数採択件数
第1回受付91%8,0447,308
第2回受付65%15,19412,478
第3回受付52%13,6427,040
第4回受付44%16,1247,128
第5回受付54%12,7386,869
第6回受付69%9,9146,846
第7回受付70%9,3396,517
第8回受付63%11,2797,098
第9回受付64%11,4677,344
第10回受付63%9,8446,248

補助対象者

 小規模事業者持続化補助金という名称ですので、補助対象者はざっくり小規模の事業者ということになりますが、具体的には下記の業種ごとの従業員数に当てはまる事業者となります。

業種従業員数(常時使用する)
商業・サービス業5人以下
宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

常時使用する労働者に含まれない人は?
①会社役員(従業員との兼務役員は含まれる)
②個人事業主本人および同居の親族従業員
③申請時点で育児、介護、傷病等での休業・休職中の社員
④日雇い労働者、2か月以内の有期雇用、季節的業務に4か月以内の期間で雇用される者
⑤所定労働時間が同一事業所で雇用される従業員より短い者
※他の補助金とは、常時労働者の取り扱いが異なりますのでご注意ください

補助対象事業

 基本的には、補助金額50万円(補助率2/3ですので、購入等の費用は75万円)の規模の補助金とイメージおくと良いでしょう。ただし、通常枠以外の特別枠に該当するのであれば補助上限200万円となり、また、インボイス特例の対象となるのであれば、50万円プラスして250万円の補助金額となります。 補助率は基本的には2/3ですが、賃金引上げ枠で申請する赤字事業者については3/4となります。

【各申請類型の概要】

補助上限金額と補助率の考え方
 例えば通常枠の場合、補助上限50万円で補助率2/3ですので、対象経費75万円のものを購入するとその2/3である50万円が補助金として受け取ることができます。対象経費が100万円だった場合、2/3は66.6万円ですが、上限金額が50万円ですので、受け取れる補助金は同じ50万円になります。

【申請類型ごとの説明】

類型概要
通常枠小規模事業者自らが作成した経営計画に基づき、商工会・商工会議所の支援を受けながら行う販路開拓等の取組を支援。
賃金引上げ枠販路開拓の取組に加え、事業場内最低賃金の引き上げを行う小規模事業者
 (※赤字事業者は、補助率、3/4に引上げ)
卒業枠販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やし小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大する小規模事業者
※例えばサービス業の事業者で従業員5名で申請し、事業実施期間に1名雇用し、従業員6名の事業者となれば要件を満たします。
後継者支援枠販路開拓の取り組みに加え、アトツギ甲子園においてファイナリスト及び準ファイナリストに選ばれた小規模事業者
※対象者は非常に限定的です
創業枠産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業の支援」を受け、販路開拓に取り組む創業した小規模事業者

取り組みやすい特別枠は、賃金引上げ枠です。自社の事業内最低賃金が該当するかどうか確認してみてください。

賃金引上げ枠の具体例は、下記の2通りあります。
①事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以内である場合
事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に引き上げれば要件を満たします。
(事業場内最低賃金1,010円で地域別最低賃金1,000円の場合、事業場内最低賃金を1,030円に引き上げることによって、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円になります。)
②事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上である場合
事業場内最低賃金を+30円以上引き上げれば要件を満たします。
(事業場内最低賃金1,050円で地域別最低賃金1,000円の場合、事業場内最低賃金を1,080円に引き上げることによって、事業場内最低賃金が+30円となります。)
①の場合、引き上げ額20円で要件を満たし、②の場合、引き上げ額30円で要件を満たします。

補助対象経費

 対象となる経費は非常に幅広く、業種を問わず使いやすい補助金です。

補助対象経費科目活用事例
①機械装置等費補助事業の遂行に必要な製造装置の購入等
②広報費新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置等
③ウェブサイト関連費ウェブサイトやECサイト等の構築、更新、改修、開発、運用に係る経費
④展示会等出展費展示会・商談会の出展料等
⑤旅費販路開拓(展示会等の会場との往復を含む)等を行うための旅費
⑥資料購入費新商品の試作品開発等に伴う経費
⑦資料購入費補助事業に関連する資料・図書等
⑧雑役務費補助事業のために臨時的に雇用したアルバイト・派遣社員費用
⑨借料機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの)
⑩設備処分費新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分等
⑪委託・外注費店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼(契約必須)

 よく使われるのは、広告宣伝のためのポスティングチラシやDM用のチラシ、パンフレットです。その他にも例えば、①機械装置等費では、飲食店での子連れ家族の集客力UP用にベビーチェアを購入するとか、美容サロンで高濃度水素酸素吸入器を導入し、顧客満足度をUPさせるなどにも使えます。また、⑪委託・外注費では、店舗改装として、バリアフリートイレの改装などにも使えます。

気を付けるポイント

ウェブサイト関連費

ウェブサイト関連費のみによる申請は不可です。また、補助金額の上限は補助金総額の1/4となります。

汎用品

汎用性が高く、当補助金の実施事業以外に使用できるものは対象外です。
(自動車、パソコン、パソコン周辺機器、複合機、タブレット端末等)

人件費

薬品報酬や従業員の給与は対象外です。

 汎用品や人件費が対象外であるのは、他の補助金でも同様に対象外であることが多いです。また、ウェブサイト関連費の取り扱いが特徴的ですので、特にご注意ください。
 また、公募要領に対象経費ごとの「対象になる経費」「対象外になる経費」について詳しく記載がありますので、必ず確認するようにしましょう。

申請の流れとスケジュール

STEP
申請準備

 補助金にあてる実施事業の検討、公募要領の読み込みを行い、事業計画書を作成します。併せて、必要書類を揃えていきます。商工会議所が発行する事業支援計画書を取得します(※下記参照)

STEP
申請手続き(事業者が実施)

 申請手続きは事業者自身が行います。郵送・電子申請どちらでも申請が可能ですが、電子申請の場合、事前にgbizIDプライムの取得が必要です。取得には約2週間程度かかりますので、電子申請を行う場合は早めの申請が必要です。(郵送申請の場合、必要書類のデータを入れたUSB等を同封する必要があります。まだ減点対象になりますので、gbisIDは必ず事前に取得しておき、電子申請での申請を行いましょう。)

STEP
申請内容の審査

 必要な書類が揃っているか等の基礎審査、事業計画書の内容を書面審査によって審査が行われます。(※各審査項目は下記参照)

STEP
採択・交付決定

申請締め切りから2~3か月後に、採択・不採択の結果が通知されます。採択の場合、必要に応じて補正や修正の指示があり、それらをクリアすれば交付決定通知書が届き、事業実施が開始できます。

STEP
補助事業の実施(事業者が実施)

交付決定日(交付決定通知書の日付)以降に、「契約」「発注」「納品」「支払い」等を行います。これらは必ず事業実施期間に行う必要があり、交付決定前や事業実施期間終了後にこれらを行った場合はその経費は対象外となってしまいます。※各公募回ごとに事業実施期間が定められています。

STEP
実績報告書の提出(事業者が実施)

事業終了後30日以内又は実績報告書の提出期限のいずれか早い日までに必要書類を揃えて実績報告を行います。

STEP
確定検査・補助金額の確定

提出した必要書類に関して事務局が審査・確認を行い、補助金額が確定します。

STEP
補助金の請求(事業者が実施)

補助金額が確定すると、「補助金確定通知書」が届きます。それに応じ、清算払請求を行います。

STEP
補助金の入金

以上の流れをすべて終えるとようやく補助金が入金となります。

STEP
事業評価報告(事業者が実施)

事業完了から1年後に状況報告が求められます。

公募回申請受付期限事業実施期間実績報告期限
第12回2023年6月1日交付決定日~2024年4月30日2024年5月10日
第13回2023年9月7日交付決定日~2024年7月31日2024年8月10日

お分かりのように、補助金が実際に入金されるのは、申請を行ってからだいぶ後になります。補助金の入金までの資金繰りには十分留意しましょう。

商工会議所(商工会)による支援

 申請時の添付書類に「事業支援計画書」というものがあります。この書類は、申請する事業者の所在地を管轄する商工会議所(もしくは商工会)がその事業者に対して発行する書類です。
 この書類は申請に必須の書類です。そのため、この補助金は申請前に商工会議所(もしくは商工会)への相談(事業計画書の案の提出)が必須になります。事業計画書の作成に慣れている方は、事業支援計画書をもらうため形式的に相談すれば良いかと思います。初めて事業計画書を作成するという方は、逆にこういった申請フローになっていますので、商工会議所の担当者にしっかり相談に乗ってもらい、採択されやすい事業計画書を作成していくと良いでしょう。
 ちなみに、自分が商工会議所地域なのか商工会地域なのかわからないかもしれませんが、よっぽど田舎でなければ基本的には商工会議所地域になるはずです。(不安な方は最寄りの商工会議所に問い合わせてみると確実です。)

事業支援計画書取得の流れ
①作成した事業計画書を商工会議所に持っていく
②担当者との面談等を行い、内容の補正やアドバイスを受ける
③後日、事業支援計画書を受け取る
※事業支援計画書の発行には1週間程度かかります。余裕を持ったスケジュールが必要です。

ちなみに、商工会議所に入会してないくても事業支援計画書を受け取れますのでご安心ください。
(もちろん商工会議所に入会し、様々な支援を受けるのも良いと思います。)

審査内容

基礎審査

必要な書類が全て揃っているか、そもそもこの補助金の対象者なのかを審査します。
当たり前ですが、ここでひっかかる場合にはせっかく作った申請書の中身は審査されません。

  1. 必要な提出資料がすべて提出されていること
  2. 「2.補助対象者」(P.5)・「3.補助対象事業」(P.6) ・「4.補助率等」(P.7)・「5.補助対象経費」(P.13)の要件及び記載内容に合致すること
  3. 補助事業を遂行するために必要な能力を有すること
  4. 小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取組であること

③、④は事業計画書で示す内容です。①、②はしっかりと事前に確認した上で申請を行うようにしましょう。

書面審査

事業計画書の内容について、下記の項目で審査されます。

①自社の経営状況分析の妥当性
  1. 自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。
②経営方針・目標と今後のプランの適切性
  1. 経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。
  2. 経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。
③補助事業計画の有効性
  1. 補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。
  2. 販路開拓を目指すものとして、補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。
  3. 補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。
  4. 補助事業計画には、ITを有効に活用する取組が見られるか。
④積算の透明・適切性
  1. 補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。
  2. 事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。

審査項目で良い点数を取るために

 この補助金の採択・不採択について、公募要領には「総合的な評価が高いものから順に採択を行います」と書かれています。そして評価をつけるのは各審査員です。そのため、自分の書いた事業計画書を、審査員に良い点数を付けさせるという観点が非常に大切になります。

事業計画書の見やすさ・読みやすさ

 審査員は審査にあたり、限られた時間の中でたくさんの事業計画書を確認し、採点を行います。8枚以内の事業計画書がすべて文字で埋められていたらどうでしょうか?目を通すのも嫌になり、読む前からその事業計画書に対する印象は悪くなるでしょう。逆に、写真や図表を用いて簡潔にわかりやすくまとめられていたらどうでしょうか?内容がスッと理解できるような見やすい事業計画書にはなんとなく良い点数を付けたくなる気持ちが想像できるでしょう。
 このように、事業計画書は審査項目にしっかり応えられているかということ以前に、見やすく・読みやすい事業計画書を作成することが非常に重要です。作成をする際にはこの観点をしっかり頭に入れましょう。

事業計画書を見やすく、説得力のある内容にするためにおすすめなのはフレームワークを活用することです。SWOT分析や3C、4Pなどを積極的に使った事業計画書にしましょう。

 以上、2023年度の「小規模事業者持続化補助金」のスケジュールや要件、審査項目など基本事項をまとめてみました。この補助金はものづくり補助金や事業再構築補助金などの経済産業省系の他の補助金よりはチャレンジしやすい補助金です。自力で申請してみようという方はぜひ本記事の内容をご参考にしてみてください。
 ただやはり、自作の事業計画書で本当に採択されるのだろうか??と不安を感じることもあるでしょう。そういった場合にはぜひ補助金の支援を得意としている専門家に相談してみてください。
 当事務所でも小規模事業者持続化補助金の支援実績があります。ご相談だけでもぜひ気軽にお問い合わせいただけると幸いです。

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